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更新日:2007年11月

Drからの守れ安産!メッセージシリーズ第10回
「がんばらないで! 妊娠うつ、産後うつにご用心」の巻

にんぷの世界へようこそ! このコーナーでは、にんぷワールドで必ず出遭う言葉や現象の“知ってるつもり”を再検証! ためになりますよ〜!

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赤ちゃんができて幸せいっぱいのプレママライフ。なのに、「おめでとう!」と言われても、なんだか心が重い…。赤ちゃんが生まれてうれしいはず。なのに、涙が止まらない…。これってもしかして、うつ? 今回は、慶應義塾大学教授、大野裕先生のお話です。

女性のほうが男性よりもうつになりやすい

大野 裕先生

大野 裕先生
慶應義塾大学保健管理センター教授
1950年生まれ。精神科医。医学博士。慶應義塾大学医学部卒業後、コーネル大学医学部、ペンシルバニア大学医学部留学などを経て、現職。NHK「きょうの健康」などテレビでも活躍。「こころが晴れるノート」(創元社)「『心の病』なんかない」(幻冬舎)、「うつ道場!」(文藝春秋)など著書多数。

うつ病に苦しむ人が増えて、社会問題になっています。医療機関でうつ病など「気分の障害」と診断された人は、平成17年度で約94万人。平成11年が44万人ですから、じつに6年間で2倍以上。
女性のうつ病も増えています。女性のほうが男性より、うつ病になりやすいのです。女性が一生のうちでうつ病にかかる割合は8%。男性に比べると、約2倍も多いという報告があります。
その一因として、女性ホルモンの影響があげられます。月経、妊娠、出産、育児、更年期…と、女性のライフステージは、女性ホルモンの変動の連続。それは男性にはない変化です。
女性はホルモンの変化にともなって、からだが変化するだけでなく、生活が変わることも多く、精神的な問題も発生しやすいのです。
最近の研究では、社会的なストレスも女性のうつの発症に大きく影響している、ということがわかってきました。「男女共同参画」などと言っても、世の中はまだまだ男性中心。男性と同じような働き方を求められる一方で、女性らしさも求められます。「家庭のことは女性がやるもの」と思われてもいます。
女性は「結婚して当然」。結婚すれば、「子どもがいて当然」。妊娠は「おめでたいこと」と決まっていて、子どもの問題は「母親の責任」……。
女性は社会的なプレッシャーにさらされています。
その結果、仕事も家庭も育児も、とついついがんばってしまう。女性がうつ病にかかりやすいのは、こうした社会的な要因も大きいのです。

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妊娠のプレッシャーが、うつの引き金に

妊娠中だって、うつになる。
ひとりで抱え込まないで、つらさを打ち明けよう!

かつて、「妊娠中、うつになる女性は少ない」と考えられていました。「赤ちゃんを授かるのはおめでたいことだから」という思い込みもありました から。
しかし最近は、妊娠中の女性も、他の時期と同じようにうつ病になりやすい、ということがわかってきました。妊娠すると、エストロゲン、プロゲステロンという2つの女性ホルモンが分泌されます。胎盤からは、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)というホルモンも分泌。さまざまなホルモンの指令を受けて、からだは、出産に向けて動き出します。これまでと違う著しい変化に、体や心が戸惑い、バランスを失うことがあるのも、当然といえば当然でしょう。
つわりが苦しくてどうにもならなかったり、どんどん変わっていく体型に違和感を感じたり、「ちゃんと母親になれるのだろうか」、「出産の痛みに耐えられるだろうか」と不安な気持ちになったり……。
流産や死産を経験した人は、「今度は大丈夫だろうか」と心配になるでしょうし、そもそも予定外の妊娠で、妊娠そのものを素直に喜べない、という人もいるでしょう。
こうしたストレスやプレッシャーが、妊娠中のうつ病の引き金になることもあります。

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マタニティ・ブルーズは、半数以上が経験する

「産後うつ病」も、だいぶ知られるようになりました。子どもが生まれて幸せなはずなのに、母親になった喜びを実感できない。わけもなく涙があふれてきて、イライラして、不安になって、子どもが泣くと「もういい加減にして!」と思ってしまう――。集中力がなくなったり、眠れなくなったり、疲労や頭痛、食欲不振など、体の不調も現れます。
こうしたうつ病の状態は、10%あまりの人が経験するといわれています。けっして珍しいことではないのです。
うつ病にまではならなくても、なんとなく気持ちが暗くなる「マタニティ・ブルーズ」とか「マタニティ・ブルー」と呼ばれる状態になる人は半数以上。そのつらさからいつまで経っても抜け出せないと、「こんな自分は母親失格」などと思ってしまうようになったりします。こうした状態が長引くと、「産後うつ病」と診断されるようになります。

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「うつ」は「休め」のサイン。助けを求めよう!

こんな症状に要注意!
2つ以上の症状があったら要注意。身近な人、専門家に相談しよう!
1.憂うつで気分が落ち込む。希望が持てない。
2.今まで楽しかったことが楽しくない。興味が湧かない。
3.食欲がない。食べてもおいしくない。食べ過ぎてしまう。
4.眠れない。眠りが浅い。途中で目覚める。
5.焦る。イライラする。口数が極端に減る。逆におしゃべりになる。
6.疲れやすい。やる気が起きない。体が重い。
7.自分はダメ人間だと思えてしまう。罪悪感を覚える。
8.集中力が低下。仕事や家事の効率が落ちる。ミスばかりする。
9.死を考える。死が頭から離れない。

妊娠や出産が「おめでたいこと」「子どもはかわいくて当たり前」「母親には母性があるはず」と信じて疑わない社会や家族に囲まれていると、「つらい」とは、なかなか言い出しにくいでしょう。
しかし、「つらく」なるのは、「だめ人間」だからでも、「弱い人間」だからでもありません。「うつ」になったからといって、けっして自分を責めないでください。
「うつ」になるのは、精神的に弱いからではないのです。甘えているからでもありません。「うつ」を恥じることはないのです。
疲れを感じたり、つらくなったりするのは、「休養が必要」とからだが信号を発しているのです。
その危険信号を無視して、なお我慢したり、ひとりで頑張ってしまっては、ますますつらくなるばかり。よくなるものもよくなりません。
うつ病は周囲も気づきにくいので、「私だけがなぜ?」と孤独感が増して、ますます、うつ病を悪化させてしまうことがあります。
睡眠と休息が必要なのです。
我慢しないで、「ちょっとつらいの。助けてほしい」と、口に出して言ってみましょう。そして、家事や育児を回りの人たちに手助けしてもらいましょう。
実家にもどってしばらく親に甘えさせてもらうのもいいでしょう。医師や助産師に気持ちを打ち明けてみましょう。地域の保健所にも相談窓口があるはずです。ママ友とグチを言い合うだけでも、気持ちが晴れることがあります。
もちろん、夫はいちばん頼りにしたい存在です。気持ちを伝えて、できるだけ早く帰ってきてもらいましょう。家事や育児に積極的に参加してもらいましょう。
妊娠出産という人生の一大事は、ひとりで頑張りきれるものではありません。うつにならなくても、家族のサポート、周囲のサポートが必要です。
しかし、待っていても、サポートはなかなか向こうからやってきてはくれません。「私はだいじょうぶ」などと過信しないで、元気なうちから、サポート環境を作っておくといいでしょう。
ひとりで頑張らないこと。休むこと。我慢しないこと。自分を責めないこと。
うつ病でも、日常的な気分の落ち込みやストレスでも、基本的な対処法は同じなのです。

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「つらい」と感じたときが、受診どき

そして、「つらく」なったら、心療内科、精神科を受診しましょう。カウンセリングを受けたり、薬を処方してもらいましょう。妊娠中や母乳育児中の薬には、多くの女性が強い拒否反応を示します。「薬の胎児への影響は?」「母乳に薬成分は出てこないの?」など、心配な気持ちはよくわかります。
しかし、うつ病が長引けば、本人がつらいままです。うつ病が悪化すれば、赤ちゃんにとってもよくありません。
薬は正しく、慎重に使わなければなりませんが、つらくなったら、医師の元を訪ね、妊娠中、産後であることを告げて、どうぞ適切な処方を受けてください。

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監修/大野 裕先生(慶應義塾大学保健管理センター教授)

 

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