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更新日:2010年7月7日

妊娠中の検査丸わかりシリーズ第16回
「羊水検査」の巻

にんぷの世界へようこそ! このコーナーでは、にんぷワールドで必ず出遭う言葉や現象の“知ってるつもり”を再検証! ためになりますよ〜!

INDEX

 

この検査は胎児の染色体を調べるものですが、だれもがみんな受ける検査ではありません。希望者だけが受けるものです。この検査には、わずかですが流産のリスクがあります。また、結果によっては、「産むか産まないか」の難しい決断を迫られることもあります。検査を受けるときは、その目的や内容、リスクなどをきちんと理解してから受けることが大切です。

羊水検査

羊水に含まれる胎児細胞の染色体を調べる検査。母体のおなかの表面から穿刺針(せんしばり)で羊水を採取するので、羊水穿刺とも呼ばれる。結果がわかるのは約2週間後。

検査時期 妊娠初期(16〜17週)
検査方法 超音波の器械で胎児や胎盤、羊水の位置を観察しながら、穿刺針を子宮の中へ挿入して、15〜20mlの羊水を採取する。
検査内容 羊水中の胎児細胞を培養したあと、Gバンド分染法という方法で染色体の数や形などを調べる。
母子健康手帳への記載例 記載しない。結果は医師または遺伝カウンセラーが口頭で説明することが多い。

*妊婦全員が受ける検査ではないが、とくに35歳以上の妊婦は赤ちゃんの染色体異常の頻度が増加するので、検査を受けるかどうか聞かれることがある。
*羊水検査を実施できる病院は限られるので、通院中以外の病院で受ける場合がある。
*費用は自費の自己負担。検査内容や病院によって多少違うが、10〜15万円のことが多い。

もっと知りたい羊水検査! Q&A

Q 羊水を調べるとなぜ、胎児の染色体のことがわかるのですか?
A 胎児を包む羊水には、胎児の皮膚や粘膜などの細胞が混じっているからです。羊水が何からできているかというと、初期のころは胎児を包む羊膜や胎児の皮膚から染み出てきたも の、それが妊娠が進むにつれて、胎児の肺の細胞から出てきた肺胞液や、腎臓からのおしっこが主成分になっていきます。ここには、胎児からはがれた皮膚や粘膜などの細胞も混じっているので、羊水をとって細胞を培養し、胎児の染色体を調べることができるのです。

Q どうやって、羊水をとるのですか?
A おなかの表面から子宮の中まで細い針(穿刺針/せんしばり)を刺し入れて、羊水を15〜20mlぐらい採取します。これを羊水穿刺(せんし)といいます。胎児や胎盤、臍帯に針が触れないように、超音波の器械で子宮内を観察しながら行います。多少の痛みを伴うので、ほとんどの病院では、針を刺す皮膚の部分を局所麻酔します。麻酔をしない場合の痛みは筋肉注射をしたときと同じぐらいです。所要時間は10分程度です。
 
Q この検査にはどういうリスクがありますか?
A 1000人に3〜5人ぐらいの割合で流産する可能性があります。また、羊水がもれ出る、おなかが張る(子宮収縮)、感染が起こることもあります。また、針を刺したり抜いたりするときには、超音波で胎内を観察しながら赤ちゃんを避け、細心の注意をはらって行いますが、急に赤ちゃんが動いて、針の先が赤ちゃんに触れ、傷つけてしまう可能性も否定はできません。検査を受けるときには、こうしたリスクについても、しっかり説明を受けて、納得して検査を受けるようにしましょう。
Q この検査で、どんな染色体の異常がわかるのですか?
A 数や部分的な構造の異常がわかります。私たちは通常、46本の染色体を持っています。父方と母方から1本ずつもらった2本1組の常染色体が22組44本、性別を決める性染色体が1組2本です。ところが、1組2本のところが1本だったり、また3本あったり、また一部が切れていたり、ひっくり返っていたりすることがあるのです。たとえば、2本1組であるはずのものが1本だけだと、「モノソミー」、3本と「トリソミー」といいます。常染色体は大きい順に1から22まで番号がつけられていて、21番目が3本あると「21トリソミー」、18番目だと「18トリソミー」、13番目だと「13トリソミー」といわれます。染色体の番号が小さいほど、障害も重度になることが多いです。
Q 染色体異常だと、赤ちゃんにどんな障害が出るのでしょうか?
A 多くの人が心配しているのはダウン症で、これは21番目の染色体の数が3本ある「21トリソミー」です。ダウン症児は、個性的な顔だち体つき、発育や知能に遅れ、心臓に障害が出ることもあり、その程度はさまざまです。ダウン症の治療法はありませんが、その子に合った教育や生活指導をしていくことで、社会生活への適応能力を高めていくことができます。ダウン症児で大学入学を果たした人もいますし、社会人として自立している人もいます。
18番目や13番目の染色体が1本多い、「18トリソミー」や「13トリソミー」は、自然に流産・胎内死亡することも多く、生まれた場合は障害の程度も重く、寿命も短いことが多いでしょう。
性染色体が1本少なかったり、一部ないのが「ターナー症候群」です。女性のみに現れます。生まれてから、新生児浮腫、心疾患、低身長、無月経で発見されることもあります。結婚後に不妊症としてわかることも。知的な障害は少なく、低身長に対してはホルモン療法などのケアもできます。
染色体の異常があっても、障害として表に出てこないこともありますし、一生を通じて気づかれないものもあります。その意味で染色体異常は病気や障害ではなく、「個性」ともいえます。インターネット上には、これらの障害を持つ多くの親やその団体が、障害を正しく理解して欲しいとホームページを開いています。ぜひ一度のぞいてみましょう。
Q この検査を受けると、先天性異常が全部わかるのですか?
A 現在の技術では、非常に細部の小さな染色体異常以外は、ほぼ正確に診断できます。しかし、わかるのは、あくまで染色体の異常だけです。先天性異常には、ほかにも臓器の奇形や代謝異常など、いろいろあります。羊水検査で染色体に異常がなかったらといって、胎児に障害がないとはいえません。
Q どういう人がこの検査を受けているのですか?
A 多くは、染色体異常による障害児を生んだことのある人、遺伝が心配な人、高齢出産でリスクの高い人などで、「検査を希望した人」です。また、これらに該当しないけれど、検査の意義を理解して、検査を希望した人です。
Q 日本では何人くらいが羊水検査を受けているのですか?
A ある検査機関のデータでは、羊水検査を受けた人は、年間約13000人です。1年間の出生数が約110万人なので、おおまかに100人に1人の妊婦が羊水検査を受けていることになります。
Q 35歳の妊婦ですが、この検査を受けるかどうか聞かれました。なぜですか?
A 妊娠年齢が高くなると、染色体異常が起こりやすくなるからです。たとえば、ダウン症は、年齢が高くなればなるほど、発生率が上昇します。25歳では約1000人に1人ですが、30歳で700人に1人、35歳で300人に1人、40歳で80人に1人。このため、35歳以上の妊婦には、羊水検査を受けるかどうか聞く病院が増えています。
しかし、この検査は、流産のリスクがありますし、結果しだいでは中絶も視野に入れた決断を迫られます。検査を受けたこと自体を後悔する人もいるので、どういう検査なのかしっかりと聞き、よく考えて受けるかどうかを決めましょう。病院のカウンセラーに相談するのもいいでしょう。この検査はあくまでも「本人の意思」で受けるものなので、強く勧められることはありません。
また、あなたが「自然にまかせる」「たとえ障害があっても出産する」と決めているのであれば、受ける意義はあまりないでしょう。
Q 20代の妊婦ですが、この検査を受けたいと思っています。
A 希望すれば受けることができます。たとえば、ダウン症と高齢出産の関係はよく取り上げられますが、10代、20代の出産でも生まれます。20代は出産する人数も多いので、ダウン症の赤ちゃんも30代よりも20代のほうが多く出産しています。しかし、検査のリスクが染色体異常の発生率よりかなり高いので、お勧めはできません。
Q 母体血清マーカー、トリプルマーカー、クワトロテストってどういうものですか? この検査でも胎児の染色体を調べられるそうですが…。 
A 母体の血液をとって胎児の染色体異常を調べるのが、母体血清マーカーです。血液中の3種類の物質を検査して結果を出すのがトリプルマーカー、さらに精度を上げるために4種類の物質を検査するのがクワトロテスト。というわけで、名前は違いますが、ほぼ同じ意味あいの検査です。「21トリソミー(ダウン症)」「18トリソミー」「神経管閉鎖障害」について、胎児がこの病気を持っている確率を調べます。この検査は、母体の血液で調べるので、羊水をとる検査と違い、流産などの重いリスクはありません。その分、気軽にできますが、結果が「1/170」「1/300」などの「確率」で出てくるので、実際おなかにいる胎児が本当に染色体異常なのかどうか、わかりません。
この検査で高い確率が出たら羊水検査を受けるという、ふるい分けのスクリーニング検査として行う場合もありますが、どんな数字が出ても心配になるので、この検査の意義自体が問われています。現在、これらの検査は厚生労働省の方針もあり、本人が希望するときに十分に説明したうえで行うこととなっています。
Q 染色体異常と診断されたとき、みんなはどういう決断をしているのですか?
A 人それぞれです。ある人は、中絶を選択します。日本では、胎児の染色体異常を理由に人工妊娠中絶を受けることはできませんが、母親が身体的、精神的苦痛を強く受けるという「母性保護」を理由に受けることができます。中絶が可能なのは妊娠21週6日までです。仮に妊娠17週に検査を受け、2週間後の19週に結果が出た場合、そこから2週間以内に決めなければいけません。
たとえ障害があっても受け入れて育てていく、高齢になってようやく授かった赤ちゃんなので産みたい、と出産を決断する人もいます。また、羊水検査を受けたけれども、その後いろいろ考えた末に、「検査結果は聞かない」で産むと決めた人もいます。羊水検査はあくまで自分の希望に基づいて行うものなので、検査を受ける受けないも自由ですし、検査結果を聞くも聞かないも自由です。
生命に対する考え方や人生観は、みんなそれぞれ違います。置かれている環境によっても違ってくるでしょう。どんな決断も尊重されるべきでしょう。
Q 羊水検査はどこの病院でも受けられますか?
A どこの病院でも受けられるわけではありません。結果によっては両親の染色体検査やDNA(遺伝子)検査が必要になることもあるので、遺伝外来のある病院で受けるといいでしょう。羊水検査は、検査を受けるときにも、結果を待つ間も、また結果が出てからも、迷いや不安が起きたり、人生の決断を迫られたり、と心が不安定になることがあります。医師やカウンセラーから、検査前はもちろん、結果についても十分な説明があり、いつでも相談できる体制が整った病院で受けましょう。通院中の病院でそうしたカウンセリングなどが受けられない場合は、紹介してもらいましょう。
Q 費用はどのぐらいかかりますか?
A 保険は使えないので自費になります。だいたい10〜15万円前後が多いようです。検査方法はすべての染色体を調べる「Gバンド分染法」で行います。病院によっては、13・18・21番の常染色体とX・Yの性染色体数だけを調べる簡便な検査をするところもあります。費用は検査内容によっても違うので、事前に確かめましょう。
Q 羊水検査のあとは安静にしたほうがいいですか?
A 検査にかかる時間は10分程度です。検査後はしばらく病院内で休養し、出血や羊水のもれ、子宮収縮などがないことを確認してから帰宅します。検査後1週間は休むなど安静を心がけましょう。また、感染予防のための抗生物質や子宮収縮を抑える薬などを処方されるので、きちんと飲みましょう。羊水のもれや子宮収縮が起こるのはほとんどが検査当日ですが、検査後1週間程度は無理をしないで注意しましょう。

監修/久保隆彦先生(独立行政法人国立成育医療研究センター 周産期診療部産科医長)

 

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