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妊娠中のトラブル・症状

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妊娠高血圧症候群について

2014.03.05

カンタン60秒!タイプ別プレママ診断

妊婦健診に行くと、血圧測定は毎回必ず受けることになります。妊娠中は血液の量がそれまでよりも増えるため血圧が上がってしまうことがあり、血圧があまり高くなると「妊娠高血圧症候群」と診断されることも。
妊娠高血圧症候群とは、妊婦の7~10%に発症し、重症化すると母子の命にかかわる怖い病気。ここでは、妊娠高血圧症候群を乗り越えた先輩ママの体験談とともに、ドクターに聞いた主な症状や、なりやすいタイプ、高血圧にならないための対策をご紹介します。

取材協力・監修

中井章人(なかいあきひと)先生

昭和58年、日本医科大学卒業。日本医科大学教授。日本医科大学多摩永山病院副院長、女性診療科・産科部長。日々の診療のかたわら、『周産期看護マニュアル よくわかるリスクサインと病態生理』などの著書を上梓、周産期医療の分野で政策の課題解決にも尽力する。妊娠中の不安や日々の疑問を解決するiPhoneアプリ『妊娠体調チェック~おなかの赤ちゃんだいじょうぶ?(iPhoneのみ対応です)』の著作・監修もつとめる。

妊娠高血圧症候群体験談
「わたしの場合」1

世田谷区のWさんは、妊娠19週で血圧が160mmHgに達し、すぐにNICU(新生児集中治療室)のある大病院へ入院することになりました。

「妊娠高血圧症候群って、だいたい30週くらいで起こる場合がほとんどなんですって。19週での入院なんて、他のハイリスク妊婦の中でも私くらい。先生方からも非常にレアケース!といわれました」(Wさん)

心の準備もないまま突然始まった入院生活。最初の3週間ほどは降圧剤を飲みながら安静治療をしていたそうですが、血圧は下がらず、尿たんぱくは日を重ねるごとに異常な高い値に……。妊娠23週、胎児の体重が300gいったか、いかないか、という頃に、NFICU(産前専用の集中治療室)へ移って、24時間完全看護状態となりました。

「それほど数値が悪いのに、私自身に自覚症状はなし。目まいも頭痛もなくて、食欲もふつうにあったので、高血圧用の減塩食が、味気なくて悲しかったです」(Wさん)

妊婦を刺激して血圧を上げないようにと、ブラインドが下げられた真っ暗な部屋で、絶対安静を告げられたWさん。テレビもダメ、本もダメ…という状態で、胎児の心拍モニターを着けて過ごすこと3週間。ついにWさんの腎臓はうまく働かなくなり、水分が排出されなくなって、体重は6日間で8kg増にも!

「もうここが胎児も母体もぎりぎりのところだろう、と、ドクターが判断したのが妊娠26週。帝王切開で産まれてきた娘は、たった582g…。でも、週数相応に順調に成長していて臓器はちゃんとできていたので、取り出されたときに、自力で肺の水を出せたほど元気だったんですって」(Wさん)

3ヶ月早く産まれ、3ヶ月をNICUで過ごして、赤ちゃんは退院しました。心配は尽きませんでしたが、大きな病気もせず、障がいもなく、今、元気いっぱいの2歳に成長。Wさんも産後は血圧も安定して、健康回復。でも、授乳しながら、高血圧の薬は服用し続けているそうです。

妊娠高血圧症候群体験談
「わたしの場合」2

長崎県のMさんは、40週0日、予定日ピッタリの出産日当日に「妊娠高血圧症候群」と診断されました。

「陣痛がきたため入院して血圧をはかったら、上が150! 尿たんぱくも3プラス(+++)で、典型的な妊娠高血圧症候群と言われました」(Mさん)

Mさんはもともと低血圧。妊娠初期~中期の血圧も、90-50くらいを推移していました。ところが臨月に入って、徐々に100-50、110-50と血圧が高めになってきたため、塩分の摂取に気をつけましょう、という指導がされたそうです。

「実母が高血圧で薬を飲んでいるため、遺伝的な要素もあるのかな?とは思っていました。ただ、出産当日に、何の自覚症状もなく血圧が150になってしまったのにはビックリ! 帝王切開の可能性もあると告げられましたが、すでにしっかり陣痛がついていたので、なるべく分娩を長引かせないよう陣痛促進剤を使って出産を急ぐことになりました」(Mさん)

入院から6時間で、無事に経膣分娩。産後はすぐに血圧が戻り、尿たんぱくも出なくなったため、治療は一切していないそうです。赤ちゃんも元気に順調に成長しています。

なぜ症候群?
どういう症状で
診断するの?

妊娠高血圧症候群といっても、重症になったり、軽くすんだり、いろいろなケースがあるようです。いったい、何が原因でおこる、どういう病気なのでしょうか?

「はっきりとした原因がわからないから"症候群"なんです。これとこれとこの症状があったら、この病気と診断しましょう、というのが、症候群という病気の定義なんです」(中井章人先生)

妊娠高血圧症候群は、次の症状のどれかがあった場合に診断されます。

  1. 血圧が高い(最高血圧が140mmHg以上、最低血圧が90mmHg以上)
  2. 血圧が高く、尿たんぱくが2回以上連続して出る
  3. 妊娠前や妊娠20週までに慢性高血圧と診断されていて、妊娠後に血圧が上がったり、尿たんぱくが出る

ちょっと前まで、「妊娠高血圧症候群」は、「妊娠中毒症」と呼ばれていました。そのときは、むくみ(浮腫/ふしゅ)も診断基準に含まれていましたが、むくみは正常な妊娠でも出ることがあるので、病名の変更とともに、診断基準からは外されています。

原因不明の血管トラブル。
血液が正常に流れなくなる

「妊娠高血圧症候群をひと言でいうと、妊娠中に起こる血管の病気なんです」という中井先生。

「妊娠すると体の血液量が、通常の1.3~1.5倍くらいに増えます。これに対して、腎臓や子宮の血管や、四肢の末梢血管も拡張して容積が増えます。ですから、健康であれば血圧も上がることなく、通常通りに保たれるのです。ところが何らかの原因で、血管が広がらないことがあるのです。すると、増えた血液が血管を圧迫し、血圧が上がります。血管が開かないので、血液が必要な場所に行き渡らなくなる……。これが妊娠高血圧症候群のメカニズムです」(中井先生)

たとえば、子宮への血流が滞れば、赤ちゃんに栄養や酸素がしっかり届かなくなります。赤ちゃんの発育が悪くなるのです。腎臓への血流が滞れば、腎臓の働きが弱まり、本来、尿には出ないはずのたんぱくが、もれ出てきます。

さらに肝臓に血液がうまく流れなくなると、HELLP症候群と呼ばれる深刻な合併症を引き起こすことがあります。肝臓は、血液循環、代謝、解毒、排泄など生命維持に重要な多くの役割を担っているのです。また、脳への血流が滞ると痙攣や意識障害などを起こす子癇発作が発症し、生命にまで危機が及ぶ深刻な事態を引き起こすことがあるのです。

「ですから、妊娠高血圧症候群と診断されると、ほとんどが新生児医療だけでなく母体の医療体制も整った病院へ搬送されます。血圧が高いこと自体が悪いのではなく、母体の血液のめぐりが悪くなることで、胎児や母体にどんな影響が出るかが予測できない――。それが、ハイリスク出産といわれるゆえんなのです」(中井先生)

妊娠高血圧症候群ってコワイ…! しかし、診断された人全員が重症化するわけではないと言います。

「血圧が高めでも、尿たんぱくが出ていても、胎児がちゃんと育っていることが大切です。そのために、お母さん自身に、そして医療にもできることがあります。重症化させないようにしていくことが大切なのです」(中井先生)

なりやすいタイプの人は
いるの?

妊娠高血圧症候群になりやすいタイプの人は、いるのでしょうか?

「病気そのものの原因がわからないので、はっきりとしたことは言えません。リスク因子は今のところ特定されていないのです」(中井先生)。

ただし次のような人は、注意したほうがいいといいます。

  • 高齢妊婦
    血管は加齢によって固くなるので、末梢血管が開きにくくなっている可能性がある。
  • 妊娠前から血圧が高めの人、高血圧の家族がいる人
    妊娠をきっかけに高血圧になることがある。
  • 急激な体重増加
    急激に太ると、血圧上昇につながることがある。
  • 初産、夫の精子に免疫が少ない人
    海外の研究で、パートナーとのセックスの回数が少ない、精子にさらされる回数が少ないと妊娠高血圧症候群になりやすいというデータが発表されている。
  • 多胎
    子宮の容積が通常(単胎)より大きくなり、母体の血液の流れを滞らせ、妊娠高血圧症候群になりやすい。

健診は欠かさずに。
急激な体重増加、
むくみに注意!

重症化すると怖い、妊娠高血圧症候群。高血圧と聞くと、心臓がドキドキしたり、頭痛がしたり、カーッとのぼせるような自覚症状がありそうですが、ないことがほとんど。健診で血圧測定や尿の検査をして、はじめてわかる病気です。だからこそ、日ごろの健診でしっかり健康管理していくことが重要なのです。

「急激に太ると、血圧上昇につながる可能性が高いので、体重管理はしっかりしていきましょう。日ごろから規則正しい生活、妊婦に必要なカロリーや栄養を摂取しましょう。塩分は控えめにするにこしたことはありませんが、塩分を制限することで確実に予防できるものではありません。ですから、健康妊婦が過度に塩分制限する必要はありません」(中井先生)

むくみは、診断基準からは外れていますが、徴候として現れることも多いそう。

「正常な妊婦でもむくみが出ることはありますが、とくに全身のむくみは、その後の血圧上昇につながる可能性が高いので、注意が必要です」(中井先生)

妊娠高血圧症候群 リスク回避5か条

軽症の場合は、安静に。
栄養指導も受けよう!

血圧が高めで、妊娠高血圧症候群の軽症と診断されたら、どう対処したらいいでしょう。

「体重管理をしっかりして、栄養指導も受けましょう。仕事も一時休んで安静に。軽症なら家事まで制限する必要はありませんが、無理はしないこと。日中1~2時間は、横になって休みましょう」(中井先生)

ただ、軽症でも突然、合併症など併発することがあるそうです。
「みぞおちあたりの痛み(悪心)や持続的な頭痛などを感じたときは、病状がかなり進んでいることも考えられます。すぐに専門医を受診してください」(中井先生)

妊娠高血圧症候群 軽症、重症の分類

軽症 重症
血圧がいずれかに該当する場合。
最高血圧 140mmHg 以上 160mmHg 未満
最低血圧  90mmHg 以上 110mmHg 未満
血圧がいずれかに該当する場合。
最高血圧 160mmHg 以上
最低血圧 110mmHg 以上
たんぱく尿が300mg/日以上で2g/日未満の場合
(原則、24時間尿を用いた定量法で判定)
たんぱく尿が2g/日以上の場合
(随時尿を用いる場合は複数回の新鮮尿検査で、連続して3+(300mg/dL)以上の場合

重症化したら入院。
一番の治療法は、分娩だ

重症化してきた場合は、入院治療が一般的。しかし、ここでも治療の基本は、安静と食事療法です。

体を横にすれば、血液がスムーズに流れて胎盤へも栄養や酸素がめぐりやすくなります。運動を控えることで、血圧を無用に上げる心配も減ります。

食事は"軽度"の減塩食。以前は"無塩"など厳しい塩分制限が行われていましたが、いまでは、塩分を制限してミネラルが摂取できなくなることのほうが問題視され、かなり緩和されているそうです。

ただし、こうした処置を行っても、血圧そのものを下げることは、とても難しいそうです。降圧剤を使うこともありますが、それによって子宮への血流を減少させるおそれがあるので、使い方も慎重にならざるをえないのです。

「入院中は、胎児が元気かどうか、モニタリングを必ず行います。胎児に元気がなければ、仮に早産時期であっても妊娠を中断する(分娩する)ことがあります。」(中井先生)

胎盤への血液のめぐりが悪くなって、胎児が弱っていないか、分娩監視装置をつけて、胎児の心拍数を監視したり、超音波検査で元気を確かめるのです。

「妊娠高血圧症候群の重症化を防ぐ一番の治療法は、妊娠を中断する(分娩する)ことです。分娩することで、母体は改善します。しかし、妊娠週数によっては、胎児が未熟で必ずしも、すぐに分娩することが出来ない場合があります。妊娠高血圧症候群の多くは、32週以降の後期に発症します。発症した時点で胎児の発育がよくない場合は、できるだけ37週の正産期に近づけながら、タイミングを見て、帝王切開か誘発分娩で出産します。これが今の最善策なのです」(中井先生)

将来の自分がわかる!?
出産を機に生活改善を

妊娠高血圧症候群は、出産を境に、血圧・尿たんぱくの数値が落ち着いていきます。念のため分娩後12週までは経過観察をすることもありますが、一番心配な赤ちゃんは、すでにもうお腹の外。「出産」という山場は乗り越えたあとなので、「あまり心配しないでいい」と中井先生は言います。しかし、油断は禁物です。

「妊娠は、一時的に体に重い負担がかかります。ある意味、体の負荷試験みたいなところがあります。その人が将来かかるかもしれない病気が、妊娠によって、早めにわかるというような側面があるのです。ですから、妊娠高血圧症候群になってしまったとしたら、それは、近い将来の自分の健康を写している鏡かもしれません。早めにわかったことをむしろラッキーととらえて、出産後も生活習慣病を招かないような規則正しい生活をする、かかりつけの病院をつくっておくなどして、将来に備えていくことが大事でしょう」(中井先生)

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