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産後不安は相談するのが一番

2009.02.04

前々回から2回にわたって紹介してきた『武蔵野大学附属産後ケアセンター桜新町』。育児に疲れたママが体を休め、育児のノウハウを学ぶことができる施設です。でも、画期的なのはそれだけじゃありません。ここには、育児をはじめとしたママが抱えるさまざまな悩みを相談できるカウンセリングルームがあるんです。
実は、産後うつは決してめずらしくないこと。この施設の取材の最後に、臨床心理士の谷口眞理先生から産後のママが抱える不安を減らすためのアドバイスを聞いてきました。

松谷口眞理(たにぐち・まり)先生

臨床心理士。武蔵野大学大学院人間社会専攻 臨床心理士コース修了。都内のクリニック勤務を経て、現在『武蔵野大学付属産後ケアセンター桜新町』でカウンセラーとして勤める。包み込むようなあたたかい人柄で、とても話しやすい。ひとりでは行き詰ってしまいがちな問題を、専門知識と豊富な経験を踏まえて、ともに考え、解決の道を探ってくれる。

不安を話すことで、
心の余裕が生まれる。

『産後ケアセンター』のカウンセリングルームでは、どんな相談ができるのですか?

ここは育児の相談だけでなく、家族のこと、夫との関係、体の疲れがとれない、なんだかわからないけれどイライラするなど、気になっていることを自由に話してもらうための場所です。一般のメンタルクリニックとは違って、施設の利用者専用ですので、できるだけ敷居を低くして多くのおかあさんに気軽に訪れてもらえるようにしています。

育児ははじめてのことだらけで、「何がわからないのかもわからない」。ママになったばかりのころって、みんなそうだと思います。

そうですね。はじめて赤ちゃんを前にして、わからないことや不安があるのは当たり前。ごく自然なことなのですが、それを誰にも話せないでひとりで抱え込んでいると、とても辛くなってしまいます。

『産後ケアセンター』を訪れたおかあさんは、「個室でゆっくり休めてラクになった」「食事を作らなくていいのがよかった」「助産師さんが教えてくれて助かった」など感想を寄せてくれますが、こういうことがひとつひとつ重なっていくことでおかあさんの不安が減って、育児のベースの力がついていくんですね。「カウンセリングルームで話をしてみたら、少しホッとした」ということになれば、それもベース力のアップにつながると思っています。

母親自身が安心した気持ちの中で育児をすることが大事なんですね。

できてることに
目を向ければ、
自信も出てくる。

生まれてみると、赤ちゃんはかわいいけれども、泣いてばかり。なぜ泣くのかわからないと、母親としてはあせるし、落ち込んでしまいます。

会社の仕事はテキパキできたのに、泣いてばかりの赤ちゃんが相手だと、どうしていいのかわからない。そんなギャップもあるのかもしれませんね。なすすべがなくて、「自分はダメだ。なんにもできない。母親失格…」などと思ってしまう。

でも、そういうおかあさんに話を聞いてみると、おっぱいはちゃんとあげているし、おむつもかえている。洋服がチクチクしていないか、室温はちょうどいいか、などのチェックもしている。できていることはたくさんあるし、ちゃんと“おかあさんしている”んです。

でも、いろいろやっても赤ちゃんが泣いていると、やっぱり、「自分はダメだなあ」と。

人間って、できていないことに意識が集中するんですね。足りないものばかりが気になって、それで不安になっていることって結構あるんです。

ここでは、「あら、ちゃんとやっているじゃないの」「これもやっている。あれもやっている」というふうに、ひとつずつできていることをおかあさんに気づいてもらう。「やるべきことはやっている」となれば、赤ちゃんが泣いていても、そんなに不安になることはない。「赤ちゃんは泣くのが仕事」なんていうと、ちょっと突き放したように聞こえるかもしれないけれど、「泣くことで呼吸器が強くなることもあるんですよ」というような話をすると、おかあさんは、ちょっとホッとした顔になる。心に余裕が生まれてくれば、赤ちゃんが泣くのもそんなに怖くなくなるんです。

夫を育児に
巻き込むコツは、
まずホメること。

育児で一番頼りにしたいのは、やはり夫ですが、毎晩帰りが遅いと、実際は何も頼めない。そんな苛立ちもあったりして……。

最近は、育児に参加するおとうさんが増えていますが、忙しいと物理的に難しいですよね。とはいっても、「全然、協力してくれない」と嘆いているおかあさんに、よくよく聞いてみると、意外と手伝ってくれていることがあるんです。

たとえば、「朝のゴミ捨てはどっちがやっているの?」と聞くと、「あ、そういえば、ゴミは出してくれています」とか、「買い物にいくとき、赤ちゃんはどうしているの?」と聞くと、「短い時間なら夫がみてくれます」など、けっこう話が出てくるんです。

まあ、そのくらいはやって当たり前……ということもあるかもしれませんが、夫のほうは、「僕だってちゃんと手伝っている」という気持ちなんですね。そこに食い違いがありますね。ここで、「どーしてもっとやってくれないの!」と追い詰めても、うまくいかない。まず「やってくれて助かった」という感謝の心を伝える。そうすれば、気をよくして、平日は無理でも土日などにもっと手伝ってくれるようになったりして。すべてがそううまくいくかどうかはわかりませんが、こちらの気持ちが変わると相手も変わってくるものです。また、もうひとつ、何をどう手伝ってほしいのか、具体的に伝えることも大事ですね。

夫はホメて育てる?

夫にもっと協力してほしい、と望む一方で、遅くまで働いているのに、子どものことまで頼みにくい気持ちもあるんですよね。

そういうこともあるでしょうね。でも、本当は手伝ってほしいのに、我慢を重ねていきなり爆発! ということになると、それもつらいですよ。夫が家族のために一生懸命に働いてくれているのは、ありがたいことだから、「あなたが頑張ってくれて感謝している」と、まず相手を受け入れて、そのうえで「育児も少しだけ助けてほしい」と、自分の気持ちを伝えてみてはどうでしょうか。

出産前は夫と同志のように働いていたのに、関係がかわったことで、コミュニケーションのとりかたが難しいということもあるでしょう。でも、伝えないと、夫は妻が困っていることに気づいていないかもしれない。話をしてみなければ、お互いにわからないこともあります。我慢を重ねていると、いきなりケンカ腰になってしまうので、休日のリラックスしているときにでも、落ち着いて話し合ってみるのがいいと思います。

ところが今度、夫が手伝ってくれると、そのやりかたが気に入らなくて、またイライラしてしまう……。

洗濯物の畳み方ひとつでも、自分のやりかたと違うと気に入らない、なんてことがありますね。じつは、そういう行き違いは結婚したときから始まっていたのかもしれません。それが「育児」を機にクローズアップされてしまう。精神的に余裕がないときなので、以前のように「ま、いいか」と流せなくなる。お互いにすりあわせをしていかないと参ってしまいます。

夫の手伝いかたが気に入らないとしても、妻が「助かったわ」といえば、夫は「またやろう」という気持ちになると思うんです。それを、「なぜ、ちゃんとしてくれないの」と正直に言ってしまうと、「もう、やらない」ってことになる。

夫にどういう言い方をしたら、自分の気持ちがうまく伝わるのか、ということは大切です。夫の性格もありますしね。カウンセリングルームでは、よく話をうかがいながら、どういう方法がいいのか、一緒に考えていきます。

産後うつはだれにでも
起こりうること。
早めに心の専門家へ。

産後は、ホルモンのアンバランスや育児への不安から、うつになる人も多いようですね。

子どもが生まれておめでたいはずなのに、気持ちが落ち込む、いわゆるマタニティブルーズ症候群を経験する人は半数以上。産後うつの罹患率は13%というデータもあります。決してめずらしいことではないんですね。

なぜだかわからないけれど、涙が出る。気分がふさいでしょうがない。自分が役に立たないという気持ちが強い……。こんなふうにいつもの自分と違う、どこかへんだと感じたら、ひとりで頑張らないことです。母親になったのだからしっかりしなきゃ、などと思わないことが大事です。こうなったら、できるだけ早く医療にかかりましょう。心の専門家の助けを借りないと苦しくなるばかりです。

どこに行ったらいいかわからなければ、出産でお世話になった産婦人科に相談してみましょう。市区町村の福祉課や育児支援センターなどでも、いいですね。近所にメンタルクリニックのような比較的かかりやすいところがあれば、電話をしてみて、子育てに関心を持っているかどうか対応をみて訪れるといいですね。

妊娠中から、「産後はうつになることもあるらしい」と知っていれば、実際にそうなったときに、あわてず、がんばりすぎず、自分を責めることもなく対処ができますね。

そうですよね。とにかくがまんしないで、早く相談するといいですね。ご主人ともよくコミュニケーションをとって、妊娠出産のことだけでなく、産後のママの体や心の状態まで理解しておいてもらうといいと思います。自分からなかなか医者にかかれないときに、夫から、「一度、話を聞いてもらいに行ってみようよ」と病院に誘ってもらえたら、いいですね。

また日ごろから、不安を減らせる場所を確保しておくのも大事です。妊娠中から自治体の子育て相談の窓口を調べておいたり、子育てネットワークのようなものを探しておく。また、産婦人科で知り合ったおかあさん友だちや地域の友だちをつくって、『困ったときには助け合おうね』と約束しておくなど、できることから進めておくといいと思います。

育児で人の手を借りることは、決して悪いことではありません。おかあさんになったのだから、全部、自分でやらなきゃいけない、なんてことはないんです。いろいろな人の手を借りて、たいへんさやつらさを分かちあいましょう。そうすれば、育児の喜びは、もっともっと大きくなると思います。

産後4ヶ月までのママをサポートしてくれる、宿泊型の新施設。臨床心理士に相談できるのも魅力。 武蔵野大学附属産後ケアセンター桜新町
東京都世田谷区桜新町2-29-6
TEL:03-5426-2900
(世田谷区民の窓口 子ども家庭支援課 TEL:03-5432-2524)

取材協力・監修/谷口眞理先生(武蔵野大学付属産後ケアセンター桜新町 カウンセラー)

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産後ケアセンターでは育児に疲れたママがゆっくり体を休め、ベテラン助産師さんに育児のノウハウを学ぶことができる施設。でも画期的なのはカウンセリングルームがあることです。体だけでなく心もサポートしてくれます。妊娠・出産のサポートサイト「プレママタウン」