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赤ちゃんの性別に関する言い伝え

2011.01.05


妊娠がわかり、流産の危険もある初期を乗り越えて安定期に入ったら、とりあえずホッとひと安心。と同時に、そろそろ赤ちゃんの性別が気になりだすものです。今でこそ、超音波診断が発達して出産前に性別がわかりますが、昔は生まれてくるまでかいもく見当がつきませんから、性別への興味は尽きなかったようです。さて、どんなことが言われているのでしょうか? はたして科学的根拠は? 東京都保健医療公社豊島病院産婦人科部長の大鷹美子先生にうかがいました。

この記事の監修

大鷹美子(おおたかよしこ)先生

東京生まれ。東京大学医学部保健学科卒業。東京大学医学部医学科卒業。日赤医療センター、NTT東日本関東病院などを経て、現在、東京都保健医療公社豊島病院産婦人科部長。専門は周産期学。出生前診断のカウンセリングにも取り組む。『どうしたの?産後ママのからだ相談室』(赤ちゃんとママ社)、『高齢出産』(主婦の友社)など著書多数。一児の母。

豊島病院ホームページ
http://www.toshima-hp.jp/index.html

「胎児の性別を
早く知りたい」
気持ちは、
今も昔も同じ

男の子がほしい、女の子がいいなど、思いは人ぞれぞれですが、早く性別を知りたいという気持ちは、昔も今も同じ。次のような言い伝えは、妊娠すると一度ならず言われたり、耳にしたりしたことがあるのではないでしょうか?

  • 妊婦のおなかが前に張り出したら男の子、横に広がったら女の子
  • 顔つきがきつくなったら男の子、やさしくなったら女の子
  • つわりがひどいと男の子(または女の子)
  • 妊娠中、塩辛いものを食べたくなったら男の子
  • 腹帯に書かれている性と逆の性の子が生まれる

さすがに、最後の「腹帯と逆の性が生まれる」というのは、まさか、信じられませんが、いろいろ言われるとその気になってきたりして…。さらに古いものには、次のような言い伝えもあります。

  • 産み月の最初の客が男なら男の子、女なら女の子が生まれる
  • 妊婦の乳首のしこりが左にあれば男、右にあれば女

乳首に関連したものには、次のようなものもありました。

  • 女性が左を下にして交わると男の子が生まれて、右を下にすると女の子が生まれる

これらは中国から伝わった陰陽道(おんみょうどう)の、左を陽、右を陰とする思想から来たもののようです。今ではあまりにも非科学的発想ですが、陰陽道が盛んだった時代には、けっこう本気で、みんなこのような迷信を信じていたのかもしれませんね。

おなかが前に出てきて、顔がきつくなったら「男の子」? まさか……。

おなかの形で
わかるのは、
"性別ではなく"
骨盤の形

おなかの出方や顔つきで胎児の性別がわかる、というのは、今でも根強くいわれています。それらは全くの迷信なのか、それとも多少は根拠があるのか、気になるところです。でも、結論からいうと、全く根拠がないそうです。

「確かにおなかが前に張り出す人、横に広がる人がいますが、それはその人の骨盤の形によるものです。骨盤が広い人は赤ちゃんの体や頭がすっぽりと骨盤の奥におさまるので、あまり前にせり出すことはありません。でも、骨盤の狭い人は中に入りきれなくて前にせり出してきます」と、大鷹美子先生。

おなかの形は、男の子か女の子かの違いではなく、骨盤の形の違いというわけです。骨盤の形や広さは、前回取り上げましたが、人それぞれで、これが安産・難産を大きく左右します。もし骨盤の形が狭かったりして10ヶ月になっても赤ちゃんが下りてこないようなときは、場合によってはレントゲンで骨盤の大きさを測って、帝王切開するかどうかを検討します。

残念ながら(?)、「顔つきでわかる」という言い伝えにも、科学的根拠も、またドクターとしての経験上の傾向もないそうです。

骨盤の形がおなかの出方を左右
骨盤の形は人それぞれ。中が十分に広いと赤ちゃんがすっぽり入るのでおなかが目立たないが、小さいと骨盤内に入りきらずにせり出してくる。

食べ物の好みで、
赤ちゃんの
性別がわかる?

妊娠すると、急に食べ物の好みが変わることがありますが、「塩辛いものが食べたくなったら男の子」というのも、科学的根拠はありません。しかし、

  • 菜食主義者には女の子、肉を好む人には男の子が生まれる確率が高い

というような言い伝えを聞くと、なにやら根拠がありそうな気がします。野菜をとると血液がアルカリ性になり、肉をたくさん食べると酸性に傾くなど、食べ物によって血液のpH(ペーハー)が変わるという話を耳にしたことのある人も多いでしょう。それに端を発したものかもしれません。ところが、人間の体はそんな単純にはできていないそうです。

「私たちの体には恒常性というものがありますから、アルカリのものを食べても、酸性のものをとっても、腎臓のpH調節機能が働いて、余分な酸やアルカリは尿として排泄されます。ですから血液は常に一定のpHを保っています。食べ物で性別が左右されることはまず考えられません」(大鷹先生)

胎児の性別は、
妊娠15週ごろから
わかる

性別は受精の瞬間に決定します。男性のX精子が受精すれば女の子、Y精子なら男の子。すでに決まっているなら、やっぱり早く知りたい。名前を考えたり、ベビー用品を準備するためにも…と思う気持ちはよくわかります。

現在では、性能のよい超音波機器を使えば、妊娠15週ぐらいで、外性器の形から性別がわります。おちんちんや外陰唇が画像に映るからです。中には性別は教えないという医師もいるし、生まれるまでの楽しみとしてとっておきたいという方もいます。しかし、たいていの病院は申し出れば教えてくれるので、知りたければ聞きましょう。ただし、大鷹先生はこうもいいます。

「しかし、超音波検査は、本来は性別を見るためのものではありません。赤ちゃんはちゃんと育っているか、胎盤の位置は低くないか、へその緒は正常かなど、検査のときにチェックしなければいけないことはたくさんあるので、医師はそれらのことを集中的に見ています。性別は、お母さんがたにせがまれて、じゃあ見てみましょうというおまけみたいなもの。だから、男か女かということばかり気をとられて、医師から注意されたことがうわのそらになってしまうのは困ります」。

最近は不妊治療で体外受精や顕微授精をする人もずいぶん増えています。その場合、受精卵が4分割か8分割したところで、細胞を1個取り出して性染色体を調べ、男女を判別する着床前診断ができます。その上で希望する性別の受精卵を子宮にもどせば、100%望みの性の赤ちゃんが生まれてきます。

海外では、この着床前診断による産み分けがわりあい広く認められていますが、日本では行われていません。日本では、まだ治療法が確立されていない遺伝性の特殊な病気の可能性があって、性別判断が必要な場合にのみ、着床前診断が許可されています。一般の人が顕微授精をしても、性別の判定をしてもらうことはできません。

「最近は、出産年齢が高くなったこともあるのか、男、女にこだわるより、とにかくどちらでもいいから赤ちゃんがほしいという人のほうが多いですね。どうしても家の跡取りを産まないといけないから男の子がほしい、というようなせっぱ詰まった話は聞かなくなりました」(大鷹先生)

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