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おっぱいは誰のもの?おっぱいの神秘と実用のおはなし

2004.09.01

妊娠すると大きくなるママのおっぱい。でも、妊娠中におっぱいから母乳が出ることはなく、母乳が出るようになるのは赤ちゃんが生まれてから。おっぱいは出産後から赤ちゃんにあげることになるわけですから理にかなっていますが、どうやってコントロールされているのか不思議に思いませんか?
ここでは、どのようにしておっぱいが膨らんで母乳が作られるのか、そして赤ちゃんにおっぱいをあげることで分泌される「愛情ホルモン」についてご紹介します。

おっぱいは、だれのもの?

妊娠すると、おなかだけでなく、胸もどんどん膨らんできます。Aカップだった人も出産前にはCカップに、乳房の重さも3、4倍になります。豊かな胸になって、とても誇らしい気分。弾力があって自分で触っても気持ちいいものです。パートナーも、いっそう豊かになった胸を見て、うれしそうだったりして。ママのものであってパパも喜ぶ、この胸の膨らみ――。でも、この胸を本当に必要としているのは、赤ちゃん。大きくなったおっぱいの中では、母乳を作るための準備が始まっているのです。

膨らんだおっぱいの中身は…

おっぱいの中をのぞいてみましょう。おっぱいは、主に15~20個の乳腺葉と脂肪でできています。乳腺葉は母乳を作る工場。妊娠すると母乳の生産ラインを増やそうとして、乳腺葉が発達します。まわりにある脂肪も、この工場を守ろうと増えるので、おっぱい全体が大きくなるのです。乳腺葉の発達には、妊娠して急増する2つの女性ホルモン、プロゲステロンとエストロゲンが、大きく関係しています。プロゲステロンは母乳工場である乳腺葉を、エストロゲンは乳管を発達させます。乳腺葉が母乳工場なら、乳管は母乳を運ぶ道。たくさんの母乳を運ぶためには広い道が必要なのです。

乳房の構造

  1. 乳腺葉

    片方の乳房に、15~20個くらい。ぶどうのひと粒のように見えるのが乳腺小葉で、これが集まったものが乳腺葉。

  2. 乳管

    乳腺葉から1本ずつ出ている管で、母乳の通り道。母乳の出口である乳管口まで続いています。

  3. 乳管洞

    乳輪の下あたりにあって、母乳を貯めておく場所。赤ちゃんはここを舌でしごいて母乳を飲みます。

  4. 脂肪組織

    妊娠すると脂肪も増えて、大事な乳腺葉や乳管などを守っています。

おっぱいは、2つじゃない!?

妊娠しておっぱいが膨らみ始めてから、おや?これはなに? わきの下やおなかなどに小さなしこりや膨らみを発見することがあります。その位置をイラストと見比べてみましょう。両わきの下から、おなかの左右、ももの内側のラインに沿っていたら、それはたぶん副乳。人間はいま大きな乳房は2つですが、ほかの哺乳類にはもっとたくさんあります。人間も哺乳類の仲間。副乳があるとしたら、それは進化のなごりなのです。

副乳は、生理になると、少ししこりが大きくなったり、痛くなることがあって、妊娠前から気づいていた人もいるかもしれません。妊娠すると、ここから本当におっぱいが出てくることもあります。ただし副乳には母乳が出る乳口がないことも多いので、中に乳汁がたまって乳腺炎を起こすことも。そんなときはドクターに相談しましょう。薬(消炎剤)などで分泌を抑えることができます。

副乳の位置

生まれたばかりの赤ちゃんから、
母乳が出る!?

「母乳はママの乳房から出る」のは常識ですが、「生まれたばかりの赤ちゃんから、母乳が出る」ことがあります。ウソのようなホントの話。まさに「へえ~!!」ですね。

これは「奇乳」とか「魔乳」と呼ばれ、生後2、3日から1週間くらいの間にみられることがあります。

母乳を作る乳腺細胞は赤ちゃんのころから存在していて、ホルモンに反応します。生まれたばかりの赤ちゃんは、胎児時代の母体のホルモンの影響がまだ残っているので、それが赤ちゃんの乳腺細胞を刺激して乳汁を作ることがあるのです。乳腺細胞は男女ともに存在するので、男の赤ちゃんから出ることもあります。もちろん出るといっても、乳首からうっすらにじんだり、せいぜいポトポトッと落ちる程度。それも母体のホルモンが残っている生後1週くらいの間だけです。

赤ちゃんが生まれて、この母乳が出たからといって、いじったりしてはいけません。組織を傷めてしまいます。自然にひくまで待ちましょう。

おっぱい工場のしくみを知ろう

さて、ママのおっぱいの話に戻りましょう。おっぱいがぐんぐん大きくなって、母乳生産の準備が整ってくると、うっすら母乳が出てくることがあります。でも、妊娠中にどっと出ないのは、ホルモンがコントロールしているからです。胎盤から分泌されているエストロゲンが、母乳を作るように指令するプロラクチンの分泌を抑えているのです。赤ちゃんが生まれると胎盤も出て、エストロゲンが激減。すると、抑えられていたプロラクチンがどんどん分泌されるようになります。産後は、妊娠中とはまったく違うホルモンに支配されることになるのです。

母乳分泌に活躍する、
2つの母乳ホルモン

母乳工場の準備段階では、2つの女性ホルモンが大きく関わっていましたが、実際の母乳分泌に活躍するのは、今度は2つの母乳分泌ホルモン、プロラクチンとオキシトシンです。

乳腺葉の中で、血液を材料に母乳を作るよう指令するのはプロラクチン。脳下垂体の前葉から分泌されて、おっぱいを作るように乳腺を刺激します。プロラクチンは赤ちゃんが乳首を吸う刺激で分泌されるので、「とにかくあかちゃんに吸ってもらう」ことが母乳を出すためには必要です。

一方、脳下垂体後葉から分泌されるオキシトシンは、作られた母乳を運ぶ役目を果たします。このホルモンの分泌にも赤ちゃんが乳首を吸う刺激が関係します。乳腺のまわりの筋肉をキュッと収縮させて、母乳を乳管に押し出すのです。このホルモンは、産後の子宮の筋肉も収縮させて、母体を回復させる役目も果たしています。

母乳分泌のしくみ

乳腺組織を拡大すると…

愛情ホルモン、
幸福ホルモンに包まれて

母乳を作るように指令を出すこのプロラクチンは、赤ちゃんが吸う刺激だけでなく、「そろそろおっぱいの時間かな」「赤ちゃんが愛しい・・・」と思うだけでも分泌します。「愛情ホルモン」と呼ばれるゆえんです。

また、赤ちゃんにおっぱいをあげていると、キューンと締め付けられるような恋にも似たセクシーな幸福感に包まれます。これは母乳を搾り出すように働くオキシトシンのせい。「幸福ホルモン」と呼ばれています。

赤ちゃんを産むこと、育てることは、つまりこの「愛情ホルモン」と「幸福ホルモン」に包まれること。「愛情」と「幸福」――。この光り輝く幸せのホルモンシャワーを浴びることができるのは、まさしくおっぱいのおかげ。女に生まれ、母になった者だけが味わえる幸せです。

監修/小川博康先生(小川クリニック副院長) 取材協力/小川クリニック(神奈川県横浜市戸塚区)

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