更新日:2006年6月
無事出産を支える最新医療最前線 part3
「日本の安産度は世界一。その地位を守るには…」の巻
にんぷの世界へようこそ! このコーナーでは、にんぷワールドで必ず出遭う言葉や現象の“知ってるつもり”を再検証! ためになりますよ〜!

妊娠がわかると、いろいろ夢が広がります。出産はなるべく自然分娩で、アメニティのいいところがいいな、ベビーマッサージをやってる病院がいい……。私たちの感覚では、お産=危険というイメージはあまりありません。幸せいっぱいで夢ふくらむもの――。日本は世界一の安産国。この誇りある地位を、医師たちは懸命な努力で作り上げてきました。今後も、この安産を支えていくにはどうしたら? というお話です。 |
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世界一の安産国。でも、やっぱり「お産は命がけ」 |
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ちょっとシビアな話ですが、ユニセフのデータによると、2000年の世界の平均妊産婦死亡率は、10万人に対して400人。つまり、250人に1人が妊娠・出産で亡くなっています。アフリカは830人、アジアは330人、オセアニアは240人、ヨーロッパで24人。もっとも高い国はアフガニスタンで1900人。
でも、日本は7人。世界でダントツにいい数字です。
「日本は、自宅近くに個人病院があって、いざというときは大病院に行ける。こういう連携システムがとてもうまくいって、安全なお産ができるようになったのです」というのは、国立成育医療センター産科医長の久保隆彦先生。
1900年当時は自宅で出産する人が、ほとんどでしたが、そのころは世界平均と同じ400人。徐々に病院で産む人が増え、1960年を境に病院出産の人の方が多くなり、そのころから妊産婦死亡もガクンと減ります。
「今はほとんどが病院での施設分娩になり、妊産婦死亡も激減しました。でも、もともとのお産のリスクが減っているわけじゃないんです。昔はよく、『お産を甘く見たらダメだよ』『心してやらないといけないものだよ』と言ったものなんですが、これは昔の話ではなくて、今でもきちんと知っておいて欲しいことなんです」(久保先生) |
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近くでお産できる病院がなくなっている!? |
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世界一の安産システムの基盤である、個人病院と地域で中心になっている大病院との、とてもいい連携が、ここ数年で急速に失われつつあります。「産科医が少なくなってきている」というニュースを聞いた人もいるでしょう。お産は1年365日待ったなし。産科のドクターは激務にさらされています。医療事故で訴訟問題が起こるケースも。そんな現実を知ると若い研修医は産科を志望しなくなる。その結果、医師不足が加速しているのです。その最も大きな影響を受けているのが、地域の中心となる大きな病院で、産科の医師が確保できずにお産をやめるところが増えてきているのです。 |
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すると、そのまわりでお産をやっていた、いくつもの個人病院もお産をやめてしまいます。緊急事態が起こった時に搬送できる病院がないからです。その結果、市町村でお産できる施設が1つもない(!)という自治体がたくさん出てきているのです。
「実際には一人の先生が麻酔をして、手術して、さらに生まれて来た赤ちゃんの蘇生もして、ということをすべてやるのはムリなんです。でも、日本はそのムリを一人の先生がずっと頑張ってやってきた。お産にはリスクがあるけれど、それでも自宅からすぐ近くでお産できるメリットのほうが大きいということで、日本の医療体制はできて、それで世界一の安全を確立できた。でも、それが今、ほころびつつあるんです」(久保先生) |
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できることは、リスクを自分で管理すること |
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「とはいっても、お産の約9割は、問題なく自然に生まれてきます。リスクの低い妊婦さんに関しては、一人の医師で対応できます。でも、お産のリスクはゼロではない。ローリスクであってもノーリスクじゃない。そのことをしっかり認識してほしいのです」(久保先生)
では、私たち妊婦にできることはなんなのでしょう?
久保先生たちは「妊娠リスク」を自己診断できるシステムを開発しました。セルフチェックで自分のリスクを客観的に知って、分娩施設選びに役立てて欲しいと提案しています。
「最近は自然分娩志向で、自宅出産や助産所での出産を望む人も増えていますが、自分のリスクを知ったうえで、分娩場所を選んで欲しいのです。たとえば、前回帝王切開をした人が自然分娩を希望した場合、子宮が破裂するリスクは1%です。この1%を高いと見るか、低いと見るか。うちの病院では高いと見て、帝王切開をすすめています。結果、うちの病院では1000人に1人の赤ちゃんしか死なせない(0.1%)医療を行えています。でも、大丈夫だと言われて助産所で子宮破裂して、うちの病院に送られてくるケースもあるんです。ですから、妊娠初期と後期の2回、自分でリスクを診断して、もしリスクが高くなったら、自ら転院を希望するなど、自分に合った病院を選ぶ作業をしてほしいのです」(久保先生) |
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取材協力/国立成育医療センター 監修/久保隆彦先生(国立成育医療センター) |
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