更新日:2006年3月
最新不妊治療の基礎知識(5) 赤ちゃん待ちの人におくる
「もうひとつの体外受精。最先端治療と不妊治療の未来」の巻
にんぷの世界へようこそ! このコーナーでは、にんぷワールドで必ず出遭う言葉や現象の“知ってるつもり”を再検証! ためになりますよ〜!

原因不明不妊患者の不妊治療のスタンダードは、これまで紹介してきたステップアップ治療。しかし、ここにステップアップ治療の到達点である「体外受精」は、「最後ではなく、最初の治療である」というクリニックがあります。不妊治療の基礎知識シリーズの最後に、独自の技術で高い妊娠率を誇る『加藤レディスクリニック』の加藤修先生を訪ねました。 |
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ステップアップ治療は無意味!?
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不妊で悩む女性は少なくなく、そのほとんどは諸検査では何も異常がない、いわゆる原因不明の不妊です。原因がわからないままに不妊治療を続け、ステップアップ治療の最後に体外受精を行ってもなお妊娠できないとなると、悩みは深い苦しみとなっていきます。
「原因不明不妊患者は、生殖における身体的なものは、不妊でない人とまったくいっしょなんです。だから、コンプレックスは持たなくていいんです」と院長の加藤先生は語ります。
『加藤レディスクリニック』では、一般的に行われている排卵誘発は基本的には行ないません。セックスをした後の子宮頚管粘液内の上昇精子数を見る検査、ヒューナーテストが良好な人には、人工授精も行いません。
「正常周期で排卵しているのに排卵誘発をする。ヒューナーテストが良好なのに人工授精をする。このような治療は20〜30年前からずっと続けられていますが、これに何の意味があるのか、ということなんです。ヒューナーテストが良好なら、精子は子宮の卵管膨大部まで到達していると予想できるんです。人工的に子宮に精子を入れる必要はないでしょう」。
排卵された卵は、卵管の先にあるイソギンチャクのような部分(卵管采)でキャッチされて精子と出会います。しかし、このキャッチ機能がうまく働かないと、待っている精子は待ちぼうけをくってしまう。加藤先生は、諸検査ではわからないけれど、原因不明不妊の原因はここにあると考えているのです。
「卵と精子が卵管膨大部で出会えていないから妊娠できない。つまり受精卵になれないわけだから、着床以前の問題だと考えるわけです。だから、卵子と精子を出会わせるために、体外受精をするんです」
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ヒューナーテストの顕微鏡ビデオ
精子がたくさん運動しているのが分かる。テストが良好なら、精子は子宮まで上っていき、卵巣膨大部まで到達していると予測できる。
※上の写真をクリックすると、Flashムービーをご覧になれます。ADSL以上の回線をご利用の方はスムーズに観ることができます。
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卵子が卵管に取り込まれる様子
精子が卵管膨大部まで到達し、卵子を待っている。イソギンチャクのような卵管采が、排卵された卵子をキャッチして精子と卵子が出会えれば妊娠できる。この機能が正常かどうかは検査ではわからない。
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より自然に近い、体にやさしい体外受精
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『加藤レディスクリニック』では、より自然に近く、より女性の体に負担のない方法で、体外受精を行なっています。卵もなるべく自然に近い方法で育てていきます。それが「クロミフェン周期」。クロミフェンというのは、飲み薬の排卵誘発剤ですが、ほとんど副作用のない薬。これとhMGというホルモンの注射を2〜3回打つだけで採卵します。
「妊娠するには1個の卵があればいい、という発想です。ただし、まったく薬を飲まず、完全に自然の周期で1個の卵を採るためには、24時間体制で見守らなければなりません。また、排卵のホルモンの変動によって、どこで採ればいいのか分からなくなるので、クロミフェンを飲んでもらいます。hMGも、たくさん投与すればいい卵ができるというわけではなく、少量で十分卵が成熟します」
また、一般的な体外受精では、卵を育てる前の生理周期から、黄体化ホルモン(LH)を抑える働きのある点鼻薬でホルモンの状態を下げておき、自力では排卵しないよう、すべてコントロールしていきます。そして卵子が十分に育ったところでhCGという排卵を促す注射をします。hCGの注射をすると、36〜40時間以内に排卵されるので、それに合わせて採卵日を決めるわけです。
しかし、加藤レディスクリニックではhCGの注射はいっさい行わずに、代わりに黄体化ホルモン(LH)を抑える点鼻薬(スプレキュア)を使います。この点鼻薬は、子宮筋腫や子宮内膜症の治療に使われる薬で、使い始めて間もない時期は、逆にホルモンの状態が一時的に上がるので、この副作用を利用して、自宅で鼻にスプレーし、36時間後に採卵します。
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「hCGというのは、妊娠するとできる絨毛(のちに胎盤になる部分)から分泌されるホルモンで、これを注射すれば、妊娠と同じ状態をつくることになります。しかも、腹水がたまるなど、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が起こることもあり、女性の体にとっても非常によくない。排卵誘発をしてhCGを注射する方法で体外受精を何回も繰り返していると、妊娠すること自体が難しくなってしまうんです」
『加藤レディスクリニック』では、採卵時も麻酔をしません。「細い針を使うので強い痛みはありません。卵を2、3個取り出すのに、かかる時間は20〜30秒です」。高度な技術があるからこそ、女性の体への負担も軽減できるのですね。
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採卵に使う針
加藤レディスクリニックで開発した採卵用の針。細いので痛みもほとんどなく、無麻酔で採卵できる。 |
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平均年齢38.7歳。40歳以上の人も。
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「患者さんの平均年齢は38.7歳。40歳以上の人もたくさんいます。過去に卵巣の手術をしておらず、かつ、排卵誘発剤を多数回にわたって使用していなければ、2回のチャンスで6〜8割の方が妊娠されます」
「排卵誘発剤を多数回にわたって使用していなければ」という前提があるのは、一般治療でhMGやhCGを多量に投与されると、排卵されない卵胞が残って、それが次の生理周期で排卵されたとしても、良好な卵子にはなりにくいからです。いくら卵がたくさん作られてもいい卵でなければ、妊娠は難しいのです。しかも、何回も人工授精を繰り返している間に、加齢による卵子の老化も生じて、ますます妊娠しにくくなっていきます。
「だから、最初で唯一の治療法が体外受精であると考えてほしいんです。原因不明不妊の人は、検査では分からない部分で、体がうまく働いていないから妊娠できない。それを治す治療が体外受精なんです。それなのに、子育てにうまくいかなくなると、“どこにも異常がなかったのに、体外受精なんかしてしまったから、うまく子どもが育たないんだ”と逃げ場にしてしまうことがある。しかし、最後の治療法ではなく、最初からこれしかなかったのだ。だから、何があってもこの子は守るという、親としての責任と意識をしっかり持ってもらいたい、と私は治療の初めにお話ししています」
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悪い状態の卵子(左)とよい状態の卵子(右)
たくさん卵ができても、空胞が多いものや細胞質が不均一なものは受精卵にはならない。
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究極の体外受精と進化する治療法
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『加藤レディスクリニック』では現在、さらに自然に近い排卵で体外受精を行う方法を開発しています。それが「SF−SET」。ある薬を1回だけ飲み、夜に点鼻薬をスプレーして、2日後に採卵するという方法です。
「これは、限りなく自然周期に近い、究極の体外受精です。1個の卵と精子を出会わすだけですからね。注射を大量に使って排卵誘発させた体外受精では、36歳以上の人は妊娠しにくいんです。したがって、なるべく自然に近い周期で確実に卵子を1個採り、1個だけを胚移植する。37歳以上の人は、二人目妊娠のために2〜3個の卵子を採って凍結保存もしますが、36歳以下の人は、1個の卵が採れればいいと考えています」
新しい治療法の研究も続けられています。その1つが「卵子の若返り」。加齢によって卵子自体が老化すると、体外受精を行っても子宮内で着床できなかったり、着床しても流産してしまうなど、なかなか妊娠できない要因になります。そこで、若い卵子から遺伝子のある核を抜いた細胞質だけの卵に老化した卵子の核を移植するという方法で卵子を若返らせるのです。遠い将来、この技術が認められれば、高齢になっても自分の遺伝子を持った子どもが望めます。すでにマウスと牛の動物実験では成功しています。
未受精卵の凍結にも成功しています(ガラス化保存法)。現在、一般の人が凍結保存できるのは受精卵のみですが、ガン(とくに若年白血病)の治療前に卵子を凍結しておきたい人のために、未受精卵の凍結保存が可能です。
「中国・上海やアメリカ・ニューヨークにも不妊治療の病院がオープンしました。これは技術を広めるためです。私のクリニックの治療や技術は、これまでの不妊治療では考えられないことでしょうが、5年後にきっと歴史を変えることができる。これが最後の私の夢です」
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クリーンルーム(培養室)
受精卵を育てる無菌室。つねに新しい技術を研究・開発している『加藤レディスクリニック』。不妊治療に、これだけの設備と人材を投じているクリニックはほかにない。
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加藤修先生
加藤レディスクリニック院長。1972年金沢大学医学部卒業。88年石川県内で初の体外受精成功。90年に国内初の不妊治療専門医院『永遠幸マタニティクリニック』を開設。93年より東京・新宿に『加藤レディスクリニック』を開設。主な著書に、『むだな検査や薬がふたりの赤ちゃんを遠ざける 不妊治療はつらくない』(主婦の友社)。 |
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監修/『加藤レディスクリニック』院長・加藤修先生 取材協力/『加藤レディスクリニック』(東京都新宿区) |
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